IoTやセンサネットワーク系サービス通信基盤を構築する場合には、従来であれば携帯キャリア会社が提供するLTE回線を用いて行っていたが、そのランニングコストやLTEのサービスエリア外での運用が課題であった。そこで近年、LPWA(Low Power Wide Area Network)と呼ばれる無線通信規格の1つであるLoRaWANが注目されている。
都築先生はこのLoRaの①920MHz帯を用いるため無免許で使用可能②伝搬距離が長く最大10km程度の長距離通信が可能③低消費電力という特長に注目、
2017年5月、LoRaの特出すべき特長である長距離通信性能について実験を行った。「LoRa以外のサブギガ無線で愛媛大学の研究所と自宅を繋いでみたが、繋がらない。これは大学と自宅の間に大きな松山城があるからなのですが、LoRa方式の920MHz無線を使用したところ、見事に繋がりました。これは面白いということで丸一日車で走ってどこまで電波が飛ぶのかを実験してみました」と都築先生。
LoRa方式の無線による屋内外の電波伝搬特性実験の結果から、SF値を12に設定した場合、見通し(Line of Sight;LOS)範囲であれば最長17.8km遠方(送信機設置場所から見える最遠の人が住んでいる場所)でもが受信できることが確認できた。この結果からLOS範囲であれば500km以上伝搬することが予想できた。一方、見通しが悪い(木造家屋2階に送信機を設置した)場合は、最遠でも2.5kmであった。また、大学の研究棟内に送信機を設置して伝搬特性を調べた結果、(高さ×長さ)=(22×90)[m]のビル内全域で通信可能であることが確認できた「見通しで500km以上伝搬することができるということは、ISS(国際宇宙ステーション)から地上まで届くということ。この結果には大きな可能性を感じます。実際に現在LoRa方式の無線を使用する実用化の話も徐々に進んでおり、水源のモニタリングや国道の崖崩れが発生しやすい斜面のモニタリングなど、実用段階に入りつつあります。都会とは違いケータイの電波すら飛んでいない環境の中で、林業を営む方や登山客に対して情報提供を行ったり、
最近深刻な話題が多い豪雨に対し、例えば水位や水質をモニタリングすることで水門の開閉を遠隔で行うなどの対策ができるようになります。
特に四国だと常に通行止めなどのリスクがある300番台以降の道路があるので、現場に行かなくて済む遠隔でのモニタリングは今後様々な分野で期待できます」(都築先生)