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実証実験1 LoRaWAN ネットワークの構築

Introduction

イントロダクション

携帯電話向けの公衆回線とは異なる、低速・低価格・省電力を特徴としたM2Mの通信規格が普及の兆しを見せています。LPWAと呼ばれるこのような通信規格の一つにLoRaWANがあります。 弊社は自社の無線通信技術を活かしたIoT事業の中で、今後普及が期待されるLoRaWANに注力し、日本国内におけるLoRaWANネットワーク構築の一旦を担うべく、様々な協力会社様とともに実証実験に取り組んでいきます。

■従来の無線通信規格に対するLPWAの位置づけ

■LoRaWANとSIGFOXについて

検証の目的

What’s the purpose?

検証の目的

低速・低価格・省電力を特徴とするLoRaWANのサービスが拡大すれば、様々なIoTアプリケーションの普及が期待できます。例えば水道メータや電気使用量などのデータ収集、ゲリラ豪雨などによる地下下水道の氾濫状況と道路の冠水情報把握、ドローンを利用した位置把握や早期救護体制の構築など、LoRaWANによって実現されるアプリケーションは我々の生活に多くの利便性をもたらすことでしょう。 今回、LoRaWAN導入の第一歩として、一台のゲートウェイによる最小規模のLoRaWANネットワークを実際に構築し、ネットワークのカバレッジ(通信範囲)を測定しました。一台のLoRaWANゲートウェイによって提供されるサービスエリアの広さを知り、LoRaWANアプリケーションのイメージを膨らませて下さい。

キーワード

M2M

Machine2Machineの略で、機器同士が人間の介在なしにコミュニケーションをして動作するシステム。
人間をターゲットにした携帯電話向けのアプリケーションなどとは異なり、通信回線に速度はあまり要求されない。

LPWA

LPWAはLow Power Wide Areaの略で、低消費電力で広域をカバーする次世代通信規格の総称である。
LPWAの普及により、携帯電話向けの公衆回線では採算が合わないとされてきたさまざまなIoTアプリケーションの実現が期待される。

LoRaWAN

これまでネットワークの物理層を担う通信方式としてLoRaが既に存在していたが、LoRaWANはそのLoRaの上で動作する共通プロトコルとして策定された。
グリーンハウスのLoRaWAN通信モジュールはモジュール上にLoRaWANプロトコルスタックが実装されているため、モジュール単体でLoRaWANネットワークに接続することもできる。

Demonstration Experiment

実証実験

グリーンハウスは、超長距離かつ超低消費電力のネットワークを実現するLoRaWANテクノロジーを使用した端末でのデータ取得の実証実験を東京都渋谷区恵比寿の7階建ての本社ビル屋上にて2017年12月に実施しました。
LoRaWANテクノロジーを活用した通信範囲の実証実験は東京近辺では初の取り組みとなり、今後、今回の実証実験を手始めに、インフラの整備や災害防止などさまざまな分野での有効活用を目指していきます。

本実験の
ネットワーク環境

ゲートウェイ

Kerlink社のLoRaWANゲートウェイは世界各国の商用LoRaWANネットワークに採用されています。本実験で設置したゲートウェイは日本の電波法に準拠した、工事設計認証取得済みの製品です。

ゲートウェイ(屋上設置時の様子)

LoRaWAN端末

LoRaWAN端末として、弊社のLoRaWANモジュールを内蔵した通信試験機を用います。弊社のLoRaWANモジュールはCPUを内蔵しており、モジュール単体での自律動作も可能です。そのため、通信試験機は以下のような簡単な構成にすることができます。

今回の実証実験はカバレッジ(通信範囲)の評価を目的とし、通信試験機からは30秒毎にシーケンス番号を送信します。受信に抜けが生じるとシーケンス番号が飛ぶため、これにより通信エラーを検出することができます。

サーバ

無線通信そのものは端末とゲートウェイ間で行われますが、LoRaWANではクラウド上のネットワークサーバが通信制御を担います。
端末から送られた無線パケットをゲートウェイが受信する際、その電波強度を検出します。検出された電波強度はデータとセットでネットワークサーバに転送されるため、ネットワークサーバ上で電波強度を確認し、通信の安定度を知ることができます。

無償利用できるクラウドサーバ「The Things Network」にグリーンハウスのLoRaWANモジュールを接続したところ

通信範囲の実証実験
概要と実行

送信端末を持ってゲートウェイ周辺を移動しながら、スマートフォンでネットワークサーバにアクセスし、通信の安定度を確認します。このようにして通信の安定度を常に確認しながら移動し、通信できた点を地図にプロットしていきます。今回は恵比寿からスタートし、明治通り沿いに東に進み、途中折れて泉岳寺の方に向かうルートを選択しました。

ゲートウェイ周辺の地形を見ると、ゲートウェイ設置場所の恵比寿と目標地点の泉岳寺では、泉岳寺の標高が15m程度低くなっています。途中、白金台が高くなっており、送受信点間の見通しを阻害します。ゲートウェイの設置場所としてビルの屋上を選択した理由は、LoRaWAN端末から送信された信号を受信されるため、ゲートウェイを極力高所に設置することが重要だからです。標高差に加えて、弊社の入っているウノサワ東急ビルはより高い2棟のビルに挟まれており、泉岳寺方面には東急不動産恵比寿ビル(*m)が建っていますので、LoRaWANの電波はこれらのビルを回りこんでゲートウェイに到達する必要があります。

実証実験の結果

各地点の通信結果を地図にプロットし、ネットワークのカバレッジを示しました。赤丸はゲートウェイの設置場所、青い旗は通信できた点を表しています。

ゲートウェイを恵比寿に設置した場合、泉岳寺まではおおむね通信圏内に入ることが確認できました。距離にして約2.7kmとなり、半径2.7kmを通信圏内とした場合、一台のゲートウェイがカバーできる面積は23km2程度となります。
山手線の内側の面積が63km2なので、その範囲を数台程度でカバーすることができる計算となります。ただし無線の通信性能は地形に大きく左右されるため、今回の結果から単純にゲートウェイの半径2.7km以内が通信圏内とは言えません。
今回はゲートウェイを7階建てのビルの屋上に設置しましたが、該当地点は周囲をより高いビルに囲まれており、設置条件には改善の余地があると言えます。送受信点の高さと見通しを確保することで、カバレッジは飛躍的に拡大します。グリーンハウスでは今後も実証実験を繰り返し、長期運用を見据えたLoRaWANネットワークの構築を進めていきます。

実証実験のまとめ

知見と課題

  • 高いビルなど干渉要素が多い都市部でも、1台で半径2.7km(渋谷、外苑前、五反田、六本木まで)の領域を、LoRaWANがある程度の距離をカバー出来うることが判明した。
  • 地形や設置条件など外的要因に左右されることも踏まえ、ゲートウェイ設置場所の適正化を行い、より検証を重ね今後も知見を重ねていくことが重要である。
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